← トップページへ戻る

天川魔法使い協定

初回掲載:2026年7月28日

登場人物

読書位置は、この端末に自動保存されます。

《第三話 天際の天秤》(3)‐2

 ** ** ** ** **

 翌日。

「あの、ですね。私は今日、お店があるのです。それに昨日、どこかの誰かさんが私の神力を半分ほど持っていってしまいましたから。疲労しているんですよ」

 十三時三〇分。朝倉昊さんは、翌日に出すための焼き菓子を作ろうか、とした矢先のこと。いきなり召喚されてしまった。

「やっぱり~。君ってさ、私が君の神力を引き出しているのを途中で止めたでしょ」

「当たり前です。少しのお裾分けのつもりでした。それが際限なく、どんどんと抜かれているので、もしや? と、思ってみれば。貴方、遠慮というものがありませんねぇ」

「だって、分からないようにこそこそやると時間が掛かるからさ。それなら一気にドカンと、いけるだけいこうかなぁって思って」

「はぁ。他人から物を借りるのです。普通は遠慮するものですが……」

「それ、庶民の考え。貴族は別にいいんだよ、遠慮なんてしなくて」

「はあ。悪い教育を受けて育ちましたね、是鷹医院長、いいえ、夏鷹くんは」

 朝倉さんより若返ったため、つい「くん」付けで呼んでしまった。しかし、それに反論はない。

「しかしこの状況。お話を聞いてはいましたが、実際こうして見ると……」

 朝倉さんが喚びつけられたのは、昨日訪れた西園寺クリニックの母屋。その庭先だった。真夏の炎天下。焼け付く日差しを受けたそこには、白いTシャツ、黒のハーフパンツ姿の七、八歳くらいの異常に目つきの悪い少年と、彼が両手で大事そうに抱えて持っている小動物がいた。

「カルス。貴様が逃した第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストのせいで、俺と勇聖は呪いを受けたのだ」

「それはご挨拶ですね。貴方のご自宅の修繕をしたのは誰だか、もうお忘れですか?」

「それとこれとは話が違う。ならば、この姿もなんとかして欲しい」

「しかしそれは、おいそれといきません。現状からみてそう判断します」

「くっ。やはりそうなのか」

「はい。貴方の姿は、私や風神さん、そして……そちらには医院長の御子息もいらっしゃいます。そしてレゼッタ君、医院長もいます。が、それら全員が呪いを解くために力を合わせても無理です」

 偉大な魔道士であり、大地の神でもある朝倉さんは、子供の姿へ変えられた光神へ近づくと体を屈ませた。

「と、言うよりも」

 顔を、ちょうど子供の視線の高さへ持っていく。

「うーん。やはり、ですね。この術は呼応の呪いです」

「なんだ、それは」

「簡単に言うと、昨日、私が桜佑に手出しをするな、と第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストに言いました。だから奴はそれを契約の〝元〟にし、ならば代わりに自分はこれを成立させる。と、いう絶対的な誓約を立てたようです」

「なんだとっ。つまり貴様のせいで、俺と勇聖はこのような姿にっ」

「厳密には、第一番目の引き金ヴィ・エ・アースト、がやったのです。私のせいではありません」

「それは屁理屈だぞ」

「しかし人間の子供に手出しをしない、というくらいの容易いものと、三代目六源神の総神たる光の神の力を抑え込む、という強固な呪いはつり合いが取れません。おそらく、貴方の息子さんがフェレットになってしまったことは、桜佑の身代わりとも言えるでしょう。ですが貴方の場合は、何かとんでもない大きなモノと引き換えに貴方がその姿になっている。力を抑え込まれ、身体能力も制限がかけられた、といえるのではないでしょうか」

 彼はそう言って、体を起こして腕組みをした。

「昨晩、医院長から連絡を頂いてから考えてみたのです。第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストが余興と言うならば、我々の知らぬ間に何事かを仕掛けているのではないかと。スタートはもう、いつなのか、どの時点なのかは分かりません。と、いうよりも、桜佑のクラスメイトの異変は、言わば開始の合図。そして奴の準備が整ったから我々に自らを曝すための舞台、だったのでしょうねぇ」

「どういうことだっ」

 ヒートアップしてくる子供姿の同格の神に対し、朝倉さんは「ここからは少し込み入ってきます。今日は、もうお庭ですることは何もありませんから家の中へ入りましょうか?」と、ニコニコの顔でそう言った。


 ** ** ** ** **

 結局。表に出ていた、夏鷹医院長、雅沢親子、それから医院長の息子さんは、朝倉さんに促され、母屋の居間で真夏のオコタにあたる羽目になった。なお、そこには「絶対にお外は出たくないですぅ~。呪いを解くときだけ呼んで欲しいです~」と、わがままを言っていた香川さんが、オコタに入ってスヤスヤと昼寝をしていた。その隣に雅沢親子が座り、上座には医院長。右側の縁に朝倉さんが座り、その対面には鷹一さんが座った。なお春人さんは「お買い物と、郵便局へ行ってカレーの注文をしてくるよっ」と、外出中だった。

「な~るほど。第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストがやつ何かを企んで、その準備が整ったから〝わざと〟君の息子の近くで行動を起こしたんだ。で、まんまとやつの〝思う壺〟」

 察しの良い医院長はすぐに事態が飲み込めたようだった。

「ええ、そうです。桜佑に手を出すな、ということを私に〝言わせた〟。その代わりに、雅沢勇聖くんに呪いが掛けられた。つまり、この呪いは同格・同等の生命の価値の間で成り立たせてある誓約です。ですから、この誓約自体を第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストが取り下げない限りは、どちらかの子供に害が降りかかったままになる、と思われます」

「参ったね。それってさ、第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストを屈服させるか倒さないと解けないやつじゃん。普通に骨が折れるよ~。っていうか。容易にできないでしょ~? 屈服も退治も。それが出来てたなら、もうとっくに、どこかで誰かがいずれかの過去で第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストを消滅させてた訳だし」

「おっしゃる通りです。が、もう一つ。この少年にされた光神さんの方がもっと厄介です」

「まあ、だよね。ある意味」

 大魔道士の朝倉さんと天上界一の術使いでもある医院長は、下座でもともと凶悪な顔つきが更に輪をかけて不機嫌そうな表情の光神を見た。

「なんだ。つまりどういうことだ」

 同時に見られてますます光神は目つきの悪い少年になる。

「いいですか? 貴方を子供にし、神力を抑えるほどの出来事が、どこかで起こっている。というより起こされたのです」

「なんだとっ!? つまり、それは……俺がこのままでいるからこそ、それと引き換えに害が与えられている何かが無事だ、と言いたいのか」

「はい、ご明察~。さっすが、私の弟子。すぐに答えが出せたね~」

 目つきの悪い少年の解答に対して、そばにいたら絶対に頭を撫でるだろう、というくらいに医院長は上機嫌で褒めた。

「莫迦な。光神の力を封じ、生命の改変に近い捻じれを引き起こすほどの何かをあやつはしたということなのか」

「おそらくそうなのでしょうね。私ではなく、風神さんでもない、医院長でもない。この三人では揃わない条件を貴方は持っている。細かく言えばキリがありませんが、同じ六源神であっても、私と貴方では総神であるかないか、光の神であるか大地の神であるか、で言えば違う。風神さんとは同じ兄弟であっても、天界王であるかないかで言えば、それもまた違う。医院長と貴方で言えば、神力の大きさの差、天上での立ち位置が違う。しかし、どの点の条件が引き換えになり、第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストが一体、何に干渉して危害を加えたのか。そこが不明なのです。だから対処どころか、何をどうして良いのか、見当がつかないのです」

「なんということだ……」

 少年の唸る声に誰もが言葉を返せなかった。

 桜佑くんと勇聖くんの相互関係に理解はできた。どちらかが呪われ続ける。それで均衡が保たれ、解除をするには第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストを屈服させる。つまり「お前たちの呪いは解いてやる」と言わせればよい。だが、じゃあお前たちの呪いは解くが代わりに、となっては堂々巡りになる。その解決方法では意味が無い。と、朝倉さんは結論が出ている。だから結局、子供たちの呪いを解くには第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストを倒すしかない。

 だが一方で、光神の力を封じた所業。これに一体、どんな意味があるのか。もしも光神をもどしてやる、とした場合。一体、何がどう害が起こってしまうのか。

 光神の力は、元来、最悪神リドールを討つためのもの。だからそれと引き換えるとしたら、一世界を木っ端微塵にする、という呪いをどこかの世界へ掛けたと考えられなくもない。つまり途方もないこと。しかしどこかの世界にそんな時限爆弾のようなことを仕掛けたとして、ではなぜ今、そんなことをしたのか。奴の言う通り「余興」なのだろうか。久々に出てきて、な~んか退屈だから六源神どもを使って、暇つぶしでもやろっかなぁ~、ということなのか。それなら百歩譲って奴を退治すればいい。そうすれば、同時に子供たちの呪いも解けるというもの。

「でもでも~。カルスさんみたいに、こねくり回して考えるなんて智慧は、第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストにあるとは思えませんよ~。奴は莫迦ですし。余興を楽しみたい、って言ったんですぅ~。こちらが余興になることをすれば、出てくると思いますぅ~」

 スヤスヤ~っと寝ていたはずの香川さんが、コタツ布団に顔をうずめたままモゴモゴ声でそんなことを言った。

「では、その余興とは?」

「わかりません~。ボク、おりこうだから、莫迦が考えることなんて思いつけません~」

「兄ちゃんっ。それでは何の意味もないだろう」

「うーん、でも一理あるね。私も莫迦じゃないから、余興の内容、思いつかないなぁ」

 若返った医院長はつまらなそうに香川さんに同調した。それに対して「父上まで陛下の話を鵜呑みにされて」と、息子さんに注意を受けるが「私、父じゃなくて弟だけど」と、それには反論。

「このような時にも、そんな世迷言を……」

 このようなビミョーなやり取りを一同はした。そして沈黙。しばし誰も言葉を発しなかった。

「……やはり、ですね。これほど悪口を言っても、奴はピクリとも動きません」

「なるほど。随分と深く、何かを企んでいるということか」

 風神、光神の兄弟は周囲におかしな気配がしていないかと精神を集中させていた。

「ふーん。これくらいじゃ、ダメか。悪口を言って出てくれば、ホント、余興なんだぁって分かったのに。そしたら、この若返ってますます強くカッコよくなった私と勝負して、私の術士としての活躍を今すぐに見せられたのに~」

「は? 父上っ。いえ。夏鷹。まさか本気だったのですかっ。悪口を言ったくらいで誘き出せるなどとは!?」

「本気も本気、大本気。だって、それが奴のやり口。奴の絶対的ルールだからね」

 そう。決してふざけているわけではない。これで、この悪口を言われて出てくる、ということでヤツが出てくれば、第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストが定めた今回の誓約なのだ。

 余裕、なのだ。最悪神は。すべての生命にとっての害悪。と言われる。だからこそ、そう言われるのだ。

「やはり見つけ出す、誘き出す、は難しいですね。そして私たちの力をもって、光神さんの呪いを解いても、解く真似をしても、解けずとも。やった結果が出るだけで、それが必ずしも第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストの出現を叶えるとは言えません。むしろ、『解く』ことで、何が起こるか分かるまでは『解く』という選択肢は、残念ながら避けるべきでしょう。引き換えになっているものが分かって、且つ、解いて大丈夫、と判断できるまでは。『解く』ことの安全性が確認できたら、その時は解いてみましょう。とはいえ、解けるかどうかも分かりませんが」

 ケーキ屋の店主は、ふぅ~とため息を一つ吐いた。智者であり、智謀者が多く集っているこの場であっても、完全な沈黙が訪れた。

「まあ、しかしですね」

 それは一瞬だけだった。

「一つできることはあります」

 そう言って、小さくなった父親の座っているオコタの布団の上に丸くなって、すや~っと寛いでいる茶色の小動物を偉大な魔道士は見た。

「ウチの子と、そして雅沢さん家の子供には、両者の条件が均衡に保たれた呪いがかけられている状況だけのようですから。ならば解けましょう。いいえ。解きましょう」

 ケーキ屋さんはニコリと笑顔を小さい動物へ向けた。それから「勇聖くん、お休みのところ申し訳ありません。起きてください」と、声を掛ける。

 するとフェレットは耳をピクッとさせて、小さな目をゆっくり開けた。

「聞けば、光神さん。貴方は奥様である英雄者様から『息子の姿が元に戻るまで帰ってくるな』と追い出されてしまった、のでしょう? ならば。この子だけなら戻せます」

「なんだと!?」

「だってそうじゃないですか? 第一番目の引き金ヴィ・エ・アーストの呪いで、解くに苦慮させられているのは貴方のほう。しかし、貴方の息子さんは、言うなればうちの子が被るはずの代わりに掛かってしまった呪いです」

「しかし、それでは勇聖の呪いが今度はどこかの誰かに移るだけなのではないのか?」

「いいえ。そんなことは起こりません。と、いうより、そんなことは起こしませんよ。大地の神である私の神力にかけて」

「どういうことだ?」

 すると黙って聞いていた夏鷹医院長も「なるほど。それなら一番相性が良いもんね」と、右肘をコタツ台に突いて、手のひらに顎を乗せてにんまりとした表情をする。

「おちび君の息子って、天上界に居た時は『大地の神に仕える一族』だった訳でしょ? で、その結果で邪神から『呪姿』の呪いが掛かった。呪姿とは、姿を他の生命体に変えられてしまう邪法。普通の実質的な変化へんげや変装とは違って、生命の性質まで書き換えられちゃう厄介な呪い。邪神はさ、六源神とその配下にしている一族を疎んじたから、お仕えしてくれてた配下の一族に、ぜ~んぶまとめて邪法を掛けた。すると、その一族は体力なり神力なりの、とにかく生命が弱る、つまり疲弊をすると呪いが発動して、他の生命へと変えられてしまう呪いをかけた」

「そうです。六源神の大地の神に仕えてくださった一族は、疲労すると生命を『フェレット』へと変えられてしまう、という痛ましい呪いを得てしまったのです」

「そうそう。呪姿の中で一番可愛らしいやつ」

「まあ、そうですが。炎一族は猫に、水一族などはサボテンになってしまいます」

「だね~。サボテンはキビシイよね~。でも水神がさ、頑張って『鉢植え状態』になるくらいにまで呪いを薄めたんだよね。完全には解けなかったから、せめて根っこが死なないようにって」

「まあ、そうです。疲労した瞬間にサボテンとなって、そのままそこら辺に転がされたら、いくら丈夫な植物であっても根が駄目となり死んでしまいます。が、だからといって鉢植え状態のサボテンに留めることができた、ということが救いになったのかといえばどうかと……」

「魔道士君。そんなこと無いよ。これは重要な事。だって生命維持を出来る最善策じゃない。これで宵の口、疲れて呪姿が発動したら、廊下でサボテンが根っこ丸出しでポトッって転がっている状態なんだよっ。それが鉢植えサボテンなら、まだ生命維持の命綱である土に根が生えていて、何より見栄えも憐れじゃない。これはとても合理的で本人たちにしてみたらかなりのかなり救いだよ~」

「はあ。そうかもですが……。まあ、とりあえずサボテンになってしまう一族はともかく。話を本題に戻しましょう」

 ケーキ屋さんはオコタから出て、その場に立ちあがった。そして自らを本来の魔道士の姿へと戻した。水色の髪、紅い色のローブ、手には先端にピンク、緑、白色の宝玉が縦に連なった愛用の杖を喚んでいた。

「つまりですね。勇聖くんに掛けられている呪いは、前世の時に持っていた大地一族の呪いが、現世に影響を及ぼした結果です。前世の呪いであるフェレットの姿を現世で常時、させている状態ということなのです。しかもその前世の因果を利用して、魔法を使っている。フェレット(前世)の姿をしていれば、人間(現世)ではない。だからややこしい状況を作り出しているのです」

 するとオコタにもぐっている香川さんの声がくぐもって聞こえてくる。

「そうですよ~。生意気な甥っ子は、ホントは魔法や神力を使ってはいけない誓約を課して人間へと転生させているんです~。でも、どうしても、人間であっても魔法が使いたい~って言うから。しかたなく、一時的に『人間ではない』って記号として、フェレット姿、つまり前世の呪姿の姿をさせて、その時なら『ま、前世だから』って便宜上、魔法を使うことに目を瞑ってやっているんです~」

 寝転がり、むにゃむにゃしている彼はそんな補足をした。

「ってボクが、そう許可をしてあげたからなんですよぉ。もう。ちゃんとやってよ、です~」

「まあ、そのいい加減な特例、で助けられる事も多いのは事実です。しかし、今回の呪いはそれを利用されたといえます。勇聖くんに掛けられてしまった呪い。それはその呪姿の暴走です。呪姿のままが止まらない、という。ですから」

「完全打破。ってことなら良い訳だね」

「はい。この連鎖している呪いを完全に打ち破り、壊してしまえば、もう他へは移りようもありません」

「だね~。大地の神なら、大地の子を救える。水神がただのサボテンを鉢植えにまで呪いを薄められた。つまり各一族の主神が、その力を呪いへぶつければ、元々主神の力を強く宿している一族には絶大な効果が見込める、と」

「はい。ましてこの子に対する呪いの仕組みも分かってますから。解くための術や方法も私には出せました」

 偉大な魔道士は、小さな動物に「ここでは手狭ですから。もう少し広い場所に行きましょう」と、微笑みかけた。

「そうだねぇ~。我が家じゃ魔道士君の解除術なんか使われた日にゃ、潰れて住むところが無くなっちゃうから。出てった出てった~」

 夏鷹医院長は左手で、しっしっしっ、と払った。しかし顔は相変わらず意地悪そうに笑っている。

「あ、そうだ。おっ兄たまも、ただお泊りしただけのテイタラクになるからさ。魔道士君について行きなよ。君の持つその黄金の剣も伊達じゃないんだし」

「は? 急に何をおっしゃるのです」

「いいから、行きなって。昨日の晩ごはんの冷やし中華、食べたじゃない。その分くらいは働いてから帰りなよ~」

「なっ……」

 オコタに当たって話をずっと聞いていた鷹一さんは、いきなりお鉢が回ってきたことに驚いた。が、父、というか、弟の言い分で、妥当と思える部分もあった。

「わかりました。私もカルス殿に同行します」

「よろしくお願いしますね。貴方の父君、いいえ、弟君にお貸ししている神力の百分の一くらいの働きをして、役にはお立ち下さい」

「はあ」

 少々、嫌な感じがしつつ、また、どうも自分の周りには「こーゆー嫌な感じ」の人が多いと思いつつ。医院長の兄、にさせられてしまった天界最高責任者補佐官も偉大な魔道士と共に行く事となった。

「では、いってきますね」

「どこで行なうのだ」

「近場です。天川緑地公園のグラウンド」

「榛名の中腹にある広大な場所か」

「はい。今日のような炎天下では誰も運動をしてはいません。すぐに戻りますのでご安心を」

「まあ、貴様の魔法と神力は信頼に値するが」

「親として心配なのは分かります。が、そのようなお小さい姿でおっしゃられても、なんだか面白いだけですので。雅沢さんは大人しく、医院長のお家でお留守番をしていてください」

「カルス。貴様のそういう所がいけ好かんのだっ。さっさと勇聖の呪いを解け」

「わかりました。では天使さん。私が転移術を使いますから。ご一緒に乗ってくださいね」

 偉大な魔道士の隣には、天上界で執務をしている天使姿の金髪碧眼の男性が肩にフェレットを乗せていた。

「勇聖。大丈夫か?」

「ああ、平気だ。父さんこそ、その姿。平気なのか」

 フェレットの問いかけに「問題は無い。だが、あるとすれば、お前が元に戻った時に、俺の方が年下になってしまうという所だけだ」と、答えたのだった。

「それなら確かに何も問題無いですねぇ」

「サラッと流すな、カルス。ちゃんと勇聖を戻すのだぞ」

「はいはい。お約束します。貴方もレゼッタ君が帰って来たら、少しはお手伝いをしてあげてくださいね~」

「貴様……。子供扱いするなっ」

「申し訳ありませんね。ウチにも子供がいるもので、ついつい。では。いってまいります」

 そう言って偉大な魔道士は、天使とフェレットと共に移動術の青い光をそれぞれに掛けると。

召喚逆転リバース

 と、魔法を発動させ、瞬間移動をしていった。