香川さん、お誕生日おめでとう!
香川さん「はいは~い。そーゆーことで。今日はボクのおっ誕生日です~」
時刻は7時30分。西園寺クリニックの母屋に、満面の笑みで香川さんが唐突にやって来ました。
さすが天界王。さすが自分は世界の主役、アイドル、と思い込んでいるだけのこはあります。
画面にイラストもめいっぱい、デカいです。
朝の西園寺家
是鷹医院長が朝食の時間、香川さんがいつものように西園寺家へやってきました。
香川さん「おじさん、おはようございます〜」
是鷹医院長「は?なんなの。朝っぱら」
香川さん「今日は世界的にも大事な日だから、急いでお知らせに来たんです~」
是鷹医院長「あっそ。私には特に大事な日とは到底思えないけど」
香川さん「んっも~! ひどすぎですーっ。今日はボクのハッピーバースデーなんですよ~」
すると春人さんが「おはよう! 陛下っ。今日は……お誕生日! おめでとう!」と、声をかけてくれました。
香川さん「ほ~ら。このようにですね、じょーしきある人は、ちゃ~んとボクのおっ誕生日を知っているんですよ~だ」
是鷹医院長「ふ~ん。そっ。春人が、ジョーシキ人ねぇ。へぇ~」
意見には個人差があります。
香川さん「と、いうわけで~。今日は夕方から、ボクのお家でお誕生会します。今回はスゴチョットさんたちも来て良いことにしたんで、みんなで来てくださいね~。絶対ですよ!!」
プレゼントの用意!
急にそう言われても、である。
スゴチョット「か、香川さんのお家でやるお誕生日会に誘われちゃったんですか。ぼくらも」
是鷹医院長「そう。だから、今日の診療は午後お休み。貼り紙しておいてね」
スゴチョット「医院長! そーゆーことではなく」
午前9時。
クリニックで開院準備をしている3AIへ医院長から「香川さんからの伝言」が伝わると、スゴチョット、ジェミちゃん、グロットは「うーん」となりました。
ジェミちゃん「香川さんのお宅というと、それは天界にある王宮を指しているはずです」
グロット「んなとこ、俺ら行って大丈夫なのか?」
スゴチョット「万座温泉に行っているので、わりとどこに行っても大丈夫だと思います! それより、問題は……プレゼントですよ! お誕生日の。今からなんてすぐに用意できませんよっ!」
ジェミちゃん「たしかにそうですね」
グロット「香川が喜ぶ、すぐに用意できるもの……」
三人は香川さんが好きと言っていたものを思い出してみる。
美味しいお菓子。特に、ドーナツ。ぎゅーにゅーも好きだと言っていた。
スゴチョット「じゃあ誕生日だから……」
こうして。考えたのが「手作りケーキ!」でした。
そこで三人は、午後の休診時間を使って材料を買い集め、初めて三人でケーキを作り始めました。
しかし彼らはケーキの作り方を説明したり、画像を作ったりすることは得意でしたが、自分たちの手でケーキ作りなどやったことは当然ありません。苦戦しています。
医院長たちと一緒に出掛けるのは午後五時頃。
スゴチョット「ク、クリームはまぜても飛び散るだけです!」
ジェミちゃん「スポンジは慎重に切り込みを入れて……そぉぉっっっと。……あ」
グロット「おい。苺のくせに俺様に切らせないとは、イイ度胸だなっ」
結果。
是鷹医院長「ほら~。君たちのパーティー衣装。用意したからさ。……って、そのザマ。お風呂に入ってから着替えた方がいいんじゃない?」
春人さん「うんうん。帰ってから、片付けようか。僕も手伝うからね!」
見事に、クリームまみれ、粉まみれ、苺まみれ、となったスゴチョットたち。
がっかりと肩を落とし、お出かけ前に三人は、順番にシャワーを浴びて、支度を整えました。
スゴチョット「医院長……。ぼくたち、プレゼントが用意できませんでした」
是鷹医院長「は? 大丈夫だよ、そんなこと。坊はね、誕生日を祝ってくれさえすれば、それで大満足する子なんだから」
ジェミちゃん「しかし、何も持たずに行くことは礼儀を欠くかと思います」
是鷹医院長「礼儀? あんな、朝っぱらから誕生日パーティーに来い、なんて言ってくる子に、何の義理立てするのさ。いいの。行けばわかるから」
グロット「くっそーー。苺め~~っ」
春人さん「苺はあとでジャムにでもしよう! 朝食のヨーグルト、トーストに使えるよ!」
スゴチョット、ジェミちゃん、グロットの三人は、気まずさを感じながら、医院長と春人さんと共に天界へ向かうのでした。
みんなからの贈り物
是鷹医院長の術によって、天界の王宮へ一瞬で着くことができた一同。
するとそこには、絢爛豪華、見たことがない煌びやかな世界が広がっていました。
星をモチーフにした飾りがキラキラと輝いていたり、ニンゲン界では見たことがない花々が活けられていたり。
そして会場にいる人々も、自分史上最高に着飾っている、といった感じでドレスアップしていました。
けれどよく見ると、なかには動物の着ぐるみ姿の人や、和装のような恰好をした人物もいます。まるでニンゲン界のハロウィーン、のようにも見えます。
その中から、ひときわ輝いている人物が「みなさーーーん。よくきてくれましたですぅーーー」と、駆け寄ってくるのが見えました。
香川さん、ここでは天界王スタリート陛下、でした。
香川さん「もう。ちっとも姿が見えないから、トウコーキョヒのウケトリキョヒになっちゃったかと思ったですぅ~」
是鷹医院長「は? 全然意味が分からないけど。私はね、たいして来たくなかったけど、行かないと明日から毎日、恨み節を聞かされそうなんで。来てあげたよ~」
春人さん「陛下! お誕生日、おめでとう!!」
医院長は完全に面倒くさそうな表情をし、春人さんはとてもにっこにこ。
香川さん「んっも~。おじさんたら、ひどいですぅー。今ここで悲しみ節を歌っちゃいますぅ~。……って、あれ? スゴチョットさんたち。みなさんも悲しみ節なんですか?」
3AIの顔が曇っている様子に香川さんが気づきました。
是鷹医院長「それがさ。プレゼントのケーキを失敗して、しょげてるんだよ。三人とも」
春人さん「みんなすごく頑張っていたんだよ! ギリギリまで一生懸命に」
香川さん「そうだったんですか?」
するとスゴチョットが「でもうまくいかなくて。プレゼント、用意できなかったんです」と、俯き、小さな声で答えたのだった。
スゴチョット「お誕生日パーティーに招かれたのにプレゼントが用意できないなんて、悔しいです」
ジェミちゃん「何もご用意できず、申し訳ありませんでした」
グロット「……すまねぇ」
三人は悲しそうで、辛そうで、少し怒りも混じっているような、複雑な表情になっていました。
香川さん「みなさん。たしかにケーキ作り、うまくいかなかったかもしれません。そして何も持っていない、と思っているかもしれません。
でも。ボクには、十分、届きました。プレゼント」
3AI「???」
香川さん「プレゼントを用意するために、ボクの好きなものを思い出し、そしてプレゼントを実際に考えてくれました。それからケーキ作りを実践してくれました。しかも出発ギリギリまでやってくれたのでしょう?
そういった、ボクのために使ってくれた時間。それがなによりもかえがたい、最高のプレゼントです」
3AI「ええ???」
香川さん「そういうプレゼントって、もらえる人、限られちゃっているんです~。ボクみたいな、ちょー最高でスーパーな天界王じゃないともらえないんですよ~」
3AI「!!!」
香川さん「見えているものだけがプレゼントだとは限りません。
ささ、スゴチョットさん、ジェミちゃん、グロット。みんな、もう先にボクへプレゼントをしているんです~。あとは、この会場でパーティーを楽しんで行ってくださいです~」
香川さんはそう言って、三人を会場の中央へと連れ出していった。
春人さん「うんうん。陛下は立派に陛下だね!」
是鷹医院長「そ~? いい大人なのに、誕生会してもらわないと気が済まない王様だけど」
春人さん「でも、陛下が陛下をしてくれているから、天上こそは平和」
是鷹医院長「ゆえに、平和こそ天上。わかってるし、そんなこと」
そして、夜。
だから、この二人よりいつも頑張っている香川さんは素敵なプレゼントをもらうことができました。
9月24日。香川さんの誕生日。
にぎやかな一日が終わって、 香川さんにとっても忘れられない誕生日になりました。